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【連載】ボストンバックに好きなものだけを 〜鈴木文さん〜

鈴木文 サン・セバスチャンのパティスリー
五感を刺激し、新しい出会いをもたらしたり、自分自身を再発見するきっかけにもなる「旅」。
本連載では、各界で輝いている方々に、旅に出るときに必ず持っていくものを教えていただき、旅の過ごし方や楽しみ方に思いを巡らします。
今回は、お菓子ブランド「SEKAI NO OYATSU」を主宰する、パティシエール・鈴木 文さんにお話を伺いました。

お話を伺った方

鈴木文さん

フレンチレストランやパティスリーで修行を積んだ後、会員制レストランでシェフパティシエに就任。退職後は世界各地でお菓子を作る旅へ。現在はお菓子ブランド「SEKAI NO OYATSU」を主宰し、企業や自治体、大使館などの商品ブランドプロモーション、レシピ開発、外部顧問などを行う。

「お菓子を作ること」そのものが、私にとっての旅

「ルーツをたどりながら、ひとつひとつ答え合わせしていました」

シェフパティシエとして働いていた会員制レストランを退職した後、約1年に渡り、世界各地でお菓子を作る旅に出かけました。50カ国以上訪れ、500種類以上のお菓子を作りました。実際に現地に行き、その土地の素材や作り手に会うことで、パティシエとしての知識や技術、感覚ひとつひとつの答え合わせをしている感覚でした。

プライベートの旅は、生きる力を養う機会だと考えていて、現地の人々の日常に目線を合わせて過ごすことを大切にしています。そのために、あえて現地通貨を使ったり、地元民が通う屋台や食堂、交通機関を利用することを意識しています。市場やスーパーマーケットにも必ず出向き、食材や調味料もチェック。現地の人々の日常には、私が日頃心がけている「強く、かつ謙虚な心をつくるヒント」がたくさん散らばっていてお手本にしたいことばかりです。現地のコーラを飲み比べすることも、密かな楽しみです。
 

いつもと違う環境にいるからこそ、いつもの私を取り戻せるアイテムを手元に

食べ物や旅にまつわる本

鈴木文さんが旅に持っていく本

世界一周旅行中に出会った欧米の旅行者は、船上にいるときもビーチサイドや公園にいるときも、景色を眺める以上に読書をしていました。それを見て、「そんな旅の楽しみ方もあるんだ」と興味が湧き、以来、私も旅するときは必ず本を持参するようになったんです。
飛行機を含め、移動中はなかなかリラックスできないことが多いですし、そもそも普段と違う環境に身を置く旅先では、神経がたかぶっていることも。そんなとき活字に触れると、なんとも満ち足りた幸福な時間になります。なかでもついつい手に取るのは、食べ物や旅にまつわる本。根っから、食べることや旅をすることが好きなんだなと実感します。

味覚をリセットする日本の味

旅は楽しい反面、普段と違う環境に長く身を置いていると、少しずつ疲労が蓄積。それには「食の違い」も大きく影響していると思うので、馴染みのある味を持参します。なかでもお茶は、海外だと甘いものしか売っていないことも多いため、ティーバッグが大活躍。水のペットボトルにポンッと入れるだけでもいいですし、お湯があれば温かいお茶でほっと一息つくことも。現地で出会う海外の人に差し上げても、とても喜んでくれます。
そのほか、梅味のお菓子やお味噌汁も持って行きますね。海外の食事は、味付けが濃かったり、脂っこいものも多いので、どうしても日本食が恋しくなるんです。現地の食事を思う存分楽しむためにも、味覚をリセットするフォローアイテムは欠かせません。

便利なマルチケアアイテム

もともとのズボラな性格もあり、ひとつで顔も髪も体もケアできるマルチケアアイテムが旅には欠かせません。多機能に使えるものは荷物が少なくて済むので旅にはありがたい。旅先ではノーメイクで過ごすことが多いので、乾燥が気になったら移動中でもササっとケアしたりと気軽にお手入れをしていますね。メーカーやブランドはその時々の気分で選んでいます。世界一周で日本から持って出て、ちょうど無くなったころ、イギリスであれこれ探し買い足したことも思い出です。

自国文化への愛があふれていた、スペインのサン・セバスチャン

「職人に受け継がれるのは技術だけではないことを教えてくれました」

スペインとフランスにまたがるバスク地方は、現在も独自の文化や風習を守り続ける民族的帰属意識が高い地域です。この地方を代表する街、スペインのサン・セバスチャンにあるパティスリーを訪ねたときは、パティシエのみなさんと一緒にバスクの伝統菓子「パステル・バスコ」を作りました。
 
印象的だったのは、その技術の高さもさることながら、パティシエたちが皆、バスクの歴史や文化に精通していて、バスク伝統のお菓子作りに携わる誇りを口にしていたこと。ふと、パティシエとしてのあり方に立ち返ったとき、私は彼らのように生まれた国や地域の文化について語れるだろうかと、はっとさせられました。職人に受け継がれる役割は「技術」だけではないということを改めて感じましたね。単なるモノ作りではなく、ストーリーを含めて表現できる作り手でありたいという想いが芽生えた旅でした。

世界一周旅行中、残念ながら世界情勢とのタイミングが合わずに立ち寄れなかった国もいくつかあります。なかでもドイツとトルコは、お菓子を学ぶ上では欠かせない国。いつか必ず行きたいと思っています。
 
メルボルン

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