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間室道子さんおすすめ『相続ゲーム エイブリーと億万長者の謎の遺言』
美容手帖のHABA CULTURE CLUB内で連載中の「間室道子さんおすすめ 今月の1冊」。ここでは、美容手帖内で紹介し切れなかった内容を、さらに掘り下げてじっくり語っていただきます。
『相続ゲーム エイブリーと億万長者の謎の遺言』ジェニファー・リン・バーンズ・著 代田 亜香子・訳(日之出出版)
「“女子高生がとつぜん巨額の遺産を相続!”なんて、子供向けのお話だわねえ」とお思いでしょう。しかしこれはシビアな現実に彩られた社会派ミステリーでもあるのです。
まず、桁が違う。78歳で亡くなったテキサスの大金持ち、トバイアス・ホーソーンは家族ではなく、その財産のほとんどを遠く離れたコネチカットにいる17歳の女の子、エイブリーに遺します。住んでいるのはおんぼろ自動車のなか。とにかく早く奨学金を手にして大学に行きたい。そのためには目立たないのがいちばん。自らを「壁紙」「透明人間」と位置付けていたこの娘は、一夜にして462億ドル=日本円で6兆ぐらいを相続することに!押寄せるパパラッチ、誘拐の危険もある。今後は一生ボディガードつきの人生…。
面白いのは、なんでこんなことになったのか、彼女にはさっぱりわからないことです。エイブリーは亡き富豪の名前も知らなかったし顔の記憶もない。彼女がホーソーン家の隠し子や隠し孫でないことも、物語の早い段階でわかります。
舞台は財団運営と寄付文化が根付いたセレブ社会。テキサスでホーソーン一族と一緒に住むことになったエイブリーは、多くを学ばねばなりません。たとえば彼女には、あの人にいくらかあげられないか、と気にかけている人物がいるのですが、財団のメンバーから“個人に金を与えることはほとんど意味がない”と諭されます。事務所にずらりと貼り巡らされた大陸別、国別、州や町の地図。これだけの地域に支援を待つ人々がいる。エイブリーは、自分は「誰か」ではなく「世界」に責任があるのだ、と思い知ります。
この地図のシーンが読みどころと重なります。本書の目玉は「結局財産を手にするのは誰?」ではない。知性と度量の広さに満ちていた亡き老人は前代未聞の相続で、何をしたかったのか――。
ホーソーン家には四人の孫がおり、全員男の子でエイブリーと同じくらいの年齢。性格はぜんぜん違うけど皆ハンサムで、おそろしく頭がいい。数学が得意なエイブリーも負けてはいません。最初はたがいに様子をうかがっていた彼女と彼らはやがて力を合わせ、老富豪が遺した謎に挑んでいきます。“ジェットコースター・ミステリー”のお手本のような快作です。
まず、桁が違う。78歳で亡くなったテキサスの大金持ち、トバイアス・ホーソーンは家族ではなく、その財産のほとんどを遠く離れたコネチカットにいる17歳の女の子、エイブリーに遺します。住んでいるのはおんぼろ自動車のなか。とにかく早く奨学金を手にして大学に行きたい。そのためには目立たないのがいちばん。自らを「壁紙」「透明人間」と位置付けていたこの娘は、一夜にして462億ドル=日本円で6兆ぐらいを相続することに!押寄せるパパラッチ、誘拐の危険もある。今後は一生ボディガードつきの人生…。
面白いのは、なんでこんなことになったのか、彼女にはさっぱりわからないことです。エイブリーは亡き富豪の名前も知らなかったし顔の記憶もない。彼女がホーソーン家の隠し子や隠し孫でないことも、物語の早い段階でわかります。
舞台は財団運営と寄付文化が根付いたセレブ社会。テキサスでホーソーン一族と一緒に住むことになったエイブリーは、多くを学ばねばなりません。たとえば彼女には、あの人にいくらかあげられないか、と気にかけている人物がいるのですが、財団のメンバーから“個人に金を与えることはほとんど意味がない”と諭されます。事務所にずらりと貼り巡らされた大陸別、国別、州や町の地図。これだけの地域に支援を待つ人々がいる。エイブリーは、自分は「誰か」ではなく「世界」に責任があるのだ、と思い知ります。
この地図のシーンが読みどころと重なります。本書の目玉は「結局財産を手にするのは誰?」ではない。知性と度量の広さに満ちていた亡き老人は前代未聞の相続で、何をしたかったのか――。
ホーソーン家には四人の孫がおり、全員男の子でエイブリーと同じくらいの年齢。性格はぜんぜん違うけど皆ハンサムで、おそろしく頭がいい。数学が得意なエイブリーも負けてはいません。最初はたがいに様子をうかがっていた彼女と彼らはやがて力を合わせ、老富豪が遺した謎に挑んでいきます。“ジェットコースター・ミステリー”のお手本のような快作です。
