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間室道子さんおすすめ『イン・ザ・メガチャーチ』
美容手帖のHABA CULTURE CLUB内で連載中の「間室道子さんおすすめ 今月の1冊」。ここでは、美容手帖内で紹介し切れなかった内容を、さらに掘り下げてじっくり語っていただきます。
『イン・ザ・メガチャーチ』朝井 リョウ・著 (日本経済新聞出版)
「推し活」「サバイバルオーディション番組」など今ど真ん中の現象に、人気作家・朝井リョウさんが切り込む社会派エンタメです。
家庭を顧みなかった47歳のお父さんにふりかかる孤独と起死回生の仕事、数々のコンプレックスを抱え大学で孤立する彼の娘、とつぜん生き甲斐を失って呆然自失する非正規雇用の35歳の女性。三人はいつ、何で、どうつながるのか。
読みどころは、本書の帯に使われている「呑むか、呑まれるか」という言葉――この二つって、実は同じなんだ、とわかってくることです。
「ネットでトレンド入り」のからくりを知った非正規雇用の女性は、今まで流行ってるって認識してきたものって何だったんだろう、と思いつつ、その方法で自分たちの望みのものを押し上げます。大学生活に自信を無くしている娘は、意識高い系の友人たちから得た環境問題の情報を、さも自分の意見のようにバイト先の子に披露し、絶妙な気持ちのよさを得る。
私がもっとも重症だと思ったのはお父さんです。レコード会社勤務の彼は、デビュー間近の男性アイドルグループの「熱狂的ファンを取り込むプロジェクト」を手掛け、SNSでとくに「優秀な反応」をする女の子に注目します。
自分の推しがグループの中で意見を言い出しづらそうにしている動画を見たこの娘は、「私もよくこうなっちゃう」「自分と似た性格の人が夢を叶えていく姿は救い」「彼から希望をもらえる人はもっとたくさんいるはず」と気持ちを入れ込みせっせと拡散に励むのです。一人の青年がモゴモゴしている数秒から「デビューを成功させて全員で幸せになろう」まで数行。なんという単純さ。最近留学の話に本腰を入れ始め、さまざまな相談をしてくる自分の娘とは大違いだ。
皮肉なことに、読者はやがてこの、「一の情報から十の感情を受け取り、百の解釈をして自分のリミッターを外す」というシナリオにお父さん自身が呑み込まれる瞬間を目の当たりにします。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」――作中の言葉と朝井リョウさんの小説家としてのたくらみがシンクロしており、「カラクリが暴かれたこの国で、あなたはどう生きますか?」という問いがつきつけられる、スリリングな作品です。
家庭を顧みなかった47歳のお父さんにふりかかる孤独と起死回生の仕事、数々のコンプレックスを抱え大学で孤立する彼の娘、とつぜん生き甲斐を失って呆然自失する非正規雇用の35歳の女性。三人はいつ、何で、どうつながるのか。
読みどころは、本書の帯に使われている「呑むか、呑まれるか」という言葉――この二つって、実は同じなんだ、とわかってくることです。
「ネットでトレンド入り」のからくりを知った非正規雇用の女性は、今まで流行ってるって認識してきたものって何だったんだろう、と思いつつ、その方法で自分たちの望みのものを押し上げます。大学生活に自信を無くしている娘は、意識高い系の友人たちから得た環境問題の情報を、さも自分の意見のようにバイト先の子に披露し、絶妙な気持ちのよさを得る。
私がもっとも重症だと思ったのはお父さんです。レコード会社勤務の彼は、デビュー間近の男性アイドルグループの「熱狂的ファンを取り込むプロジェクト」を手掛け、SNSでとくに「優秀な反応」をする女の子に注目します。
自分の推しがグループの中で意見を言い出しづらそうにしている動画を見たこの娘は、「私もよくこうなっちゃう」「自分と似た性格の人が夢を叶えていく姿は救い」「彼から希望をもらえる人はもっとたくさんいるはず」と気持ちを入れ込みせっせと拡散に励むのです。一人の青年がモゴモゴしている数秒から「デビューを成功させて全員で幸せになろう」まで数行。なんという単純さ。最近留学の話に本腰を入れ始め、さまざまな相談をしてくる自分の娘とは大違いだ。
皮肉なことに、読者はやがてこの、「一の情報から十の感情を受け取り、百の解釈をして自分のリミッターを外す」というシナリオにお父さん自身が呑み込まれる瞬間を目の当たりにします。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」――作中の言葉と朝井リョウさんの小説家としてのたくらみがシンクロしており、「カラクリが暴かれたこの国で、あなたはどう生きますか?」という問いがつきつけられる、スリリングな作品です。
