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間室道子さんおすすめ『恋のすべて』
美容手帖のHABA CULTURE CLUB内で連載中の「間室道子さんおすすめ 今月の1冊」。ここでは、美容手帖内で紹介し切れなかった内容を、さらに掘り下げてじっくり語っていただきます。
『恋のすべて』くどうれいん・染野太朗・著 (扶桑社)
くどうれいんさんと染野太朗さん、人気歌人の恋の短歌集です。Ⅱはどちらの歌なのかがはっきり分かれていますが、Ⅰはテーマで章立てられており、詠み人の名前はページの左隅に小さくあるだけ。ふたりの恋歌がブレンドみたいに収録されているのが魅力的です。
「厚さ1cmに満たない本で、しかも短歌なんでしょう?ほんとに“恋のすべて”があるの?」とおっしゃる方もいるでしょう。でも、五、七、五、七、七にこめた想いは、「切り取られた」「枠に押し込められた」ではなく、三十一文字になったからこそますます広がり、大きくなっていくよう。
これが日本の真髄、と思いました。利休の四畳半の茶室、生け花、枯山水の庭園、そして俳句、短歌など、わが国には、小さく納められたゆえに彼方にまで広がるような趣きを放つ文化が多いです。
くどうさんと染野さんについては、「男女が恋を詠み合っているので恋愛関係?!」とワイドショー的な想像もしてみたのだけれど、どうも感じがちがうなあ、と気づきました。
私の考えでは、彼らが好きなのは相手個人ではなく、短歌を詠み合う時間なのでしょう。本の中ほどに「贈答歌」という章があり、一方が発した歌にもう一方がアンサー的な歌を返しているのですが、その様子は「男として、女として、目の前の相手が好き」というよりナイスサーブにナイスレシーブを返すようなさばさばした力の見せ合い――歌心を胸に、ともに短歌という大海原に出ようじゃないか、というスケールの大きなつながりを感じます。
本書に話を戻しますと、「KISS」「嫉妬」「ふれる」などいかにも恋が詠まれそうなものだけでなく、「3」「DENIM」「永遠」など読者のイメージが膨らむお題があるのもニクいです。
バレンタインのこの時期におすすめの二首は、
「あなたの手が触れることなどないけれど厚く乾いているぼくの手は」
染野太朗(ふれる)
「いよかんを終日持ち歩いていた 剝けばさみしくなる、わかってる」
くどうれいん(Yellow)
希望あり、胸を刺す悲恋感あり、つのる想いあり、なつかしの恋あり、今渦中の熱愛あり。たしかにここにすべてが、と納得してしまえる素晴らしい一冊で、短歌を読みなれていない人にもおすすめです。
「厚さ1cmに満たない本で、しかも短歌なんでしょう?ほんとに“恋のすべて”があるの?」とおっしゃる方もいるでしょう。でも、五、七、五、七、七にこめた想いは、「切り取られた」「枠に押し込められた」ではなく、三十一文字になったからこそますます広がり、大きくなっていくよう。
これが日本の真髄、と思いました。利休の四畳半の茶室、生け花、枯山水の庭園、そして俳句、短歌など、わが国には、小さく納められたゆえに彼方にまで広がるような趣きを放つ文化が多いです。
くどうさんと染野さんについては、「男女が恋を詠み合っているので恋愛関係?!」とワイドショー的な想像もしてみたのだけれど、どうも感じがちがうなあ、と気づきました。
私の考えでは、彼らが好きなのは相手個人ではなく、短歌を詠み合う時間なのでしょう。本の中ほどに「贈答歌」という章があり、一方が発した歌にもう一方がアンサー的な歌を返しているのですが、その様子は「男として、女として、目の前の相手が好き」というよりナイスサーブにナイスレシーブを返すようなさばさばした力の見せ合い――歌心を胸に、ともに短歌という大海原に出ようじゃないか、というスケールの大きなつながりを感じます。
本書に話を戻しますと、「KISS」「嫉妬」「ふれる」などいかにも恋が詠まれそうなものだけでなく、「3」「DENIM」「永遠」など読者のイメージが膨らむお題があるのもニクいです。
バレンタインのこの時期におすすめの二首は、
「あなたの手が触れることなどないけれど厚く乾いているぼくの手は」
染野太朗(ふれる)
「いよかんを終日持ち歩いていた 剝けばさみしくなる、わかってる」
くどうれいん(Yellow)
希望あり、胸を刺す悲恋感あり、つのる想いあり、なつかしの恋あり、今渦中の熱愛あり。たしかにここにすべてが、と納得してしまえる素晴らしい一冊で、短歌を読みなれていない人にもおすすめです。
