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間室道子さんおすすめ『生きる言葉』

美容手帖のHABA CULTURE CLUB内で連載中の「間室道子さんおすすめ 今月の1冊」。ここでは、美容手帖内で紹介し切れなかった内容を、さらに掘り下げてじっくり語っていただきます。

『生きる言葉』俵 万智・著 (新潮新書)

今回紹介するのは俵万智さんの『生きる言葉』。今なお読み継がれている大ヒット短歌集『サラダ記念日』で知られる歌人のエッセイ集です。
 
先日、テレビのトーク番組に彼女が出ていました。ユニークだなあ、と思ったのは息子さんの話です。
 
親は習慣で声掛けをしてしまうもので、大学生になったひとり息子が出掛ける時、「忘れ物ない?」と言った俵さん。すごいのは彼の切り返しです。ふっと顔をこちらに向け、「あるかもしれないけどわからない。なぜなら忘れているから」。
 
通常の親御さんなら「ないよ、で流してくれたらいいじゃない~」とか「ナマイキね!」となりそう。でもそこは日本語の達人!「忘れ物ないか」はたしかにおかしい、反省しちゃった、と語る彼女の笑顔から伝わってきたのは、玄関先で母と子の双方が「面白いことを言うね」と互いへの興味や愛情を顔に浮かべていたであろうこと。
 
エピソードは続き、宿題をしているとすぐに「あー疲れた」とこぼすのに遊んでいる時はぜんぜんそうならない。少年時代のわが子にそれを少し嫌味っぽく指摘すると、息子さんが一言。「集中は疲れるけど夢中は疲れない」。
 
この親にしてこの子あり!うなりながら夢中で見ていた番組内で紹介されていたのが本書なのです。
 
言葉をめぐるエッセイ集で、SNSの誹謗中傷やAI短歌など時代の最先端を取り上げる中、胸を打つのはやはり息子さんとのやりとりでした。赤ん坊だった彼が単語や文字を獲得する様子に目を見張り、絵本を介して幼稚園でのできごとを知り、移住した石垣島でのわが子の変化に言語の土台は脳みそではなく五感だと実感し・・・。本書は子供というあたらしい存在を通じて俵さんがいまいちど言葉を発見していくルポでもあるのです。
 
要所に短歌が差しはさまれているのも魅力的で、自ら熱望して宮崎県の山奥にある全寮制の中学校に入学したけど、その直後に重度のホームシックになってしまったわが子に向けた一首。
「日に四度電話をかけてくる日あり息子の声を嗅ぐように聴く」
 
オドロキはここからで、「そのうちに慣れて、あの気持ちはなんだったのかな、と思うようになるから」とアドバイスしてくれた寮の先生に息子さんがなんと返したか。乞うご期待!
 
生きた言葉が心に深く沁み入る、現在十六万部突破のベストセラーです。
 
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