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間室道子さんおすすめ『王妃の帰還』

美容手帖のHABA CULTURE CLUB内で連載中の「間室道子さんおすすめ 今月の1冊」。ここでは、美容手帖内で紹介し切れなかった内容を、さらに掘り下げてじっくり語っていただきます。

『王妃の帰還』柚木 麻子・著 (実業之日本社)

著作『BUTTER』が英国で三つの文学賞に輝き、全世界で百五十万部超えのベストセラーになっている柚木麻子さん。過去の作品への人気も高まり、この春表紙を変えて新装文庫化されたのが今回紹介する『王妃の帰還』です。
 
物語は名門である聖鏡女学園の中等部二年B組で起きた盗難事件をめぐる「裁判」から始まります。クラスで最高位の「姫グループ」のトップにいた滝沢さんがなんと罪を自白。権威失墜した彼女は姫たちから追い出されることに。そして主人公・前原範子のいる地味なオタクグループが失脚した“王妃”の受け入れ先になってしまうのです。
 
読みどころはまず、事件が「姫グループ」以外の集団にも影響を与え群雄割拠が起きること。強面ぞろいの「ゴス軍団」、派手で気だるげな「ギャルズ」、おしとやかな優等生たちの「チームマリア」。このあたりの生き生きした書き方は女子校出身である柚木麻子さんの体験と観察眼ならでは。
 
さらにクラス内カーストでは地味と位置付けられているけど範子を囲むメンバーも個性的です。グループの広報的存在であるサブカル女子のチヨジ、母のように皆を包み込むスーさん、毒舌系ハーフのリンダさん。そんななかに入れてもらったのに謙虚になるどころか相変わらずわがままし放題の王妃をめぐり、メンバーに亀裂が…。
 
さらなる読みどころは絶世の美女ながら性格は最悪な元クラスの女王以上に、おとなしいはずの範子の人間性があらわになっていく様子です。仲良し地味グループの実態は、関係性のぬるさと甘えだった。そして盗難事件には黒幕がいるとわかり、糾弾に乗り出す範子の変なスイッチの入り方。
 
「正しいことをやっているという絶対の自信。力の限り相手を痛めつけても批判されない安心感」。
 
これが明るい大逆襲ではなく、この年齢ならではの歪んだ全能感で書かれているのがスリリング。こわれゆく地味グループ、そして王妃・滝沢さんのてんまつやいかに!

ストーリーにはシングルマザーである範子の母の衝撃の恋愛相手、軽はずみなひとりの女子が引き起こした学園を揺るがすスキャンダルなどがからみ、大人の複雑さ、濃厚さにもドキドキが止まりません。十代の痛みと輝きに満ちた、少女小説の傑作です。
 
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